恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~

10.君を守りたい~ Side 匡 ~

俺は一体なにを間違えた?


手を振り払い、駆け出した眞玖の姿が脳裏にこびりつく。

追いかけなくては、そう思うのに彼女の悲鳴のような声が、力の入らない足を踏みとどまらせる。


『片想いが実って、恋人になれて本当に嬉しかった。でも好きすぎて、失ったらどうしようって怖くなった。匡の本心も、望んでいることもわからない私には、せめて嫌われないように振る舞うしかできなかった』


『名家のご令嬢でもなく、匡に似合う立場でもない私は、今後迷惑をかけるとわかっている。なにも持たない私が婚約話を積極的に進められるわけないじゃない。私だって嫉妬するし、好きな人を独り占めしたい。ずっと隠してきたけど……もう無理』


眞玖はこれまで一度も俺に声を荒げたり、感情をぶつけたりしなかった。

俺が強引な真似をしても困った表情を浮かべつつ、常に受け入れてくれていた。

ただ時々、なにかを必死に堪えるように、もの言いたげな視線を彷徨わせていた。

俺は彼女のサインに気づいていたのに、深く捉えていなかった。

いや、眞玖の懐の深さに甘えていた。

眞玖が誰よりも繊細で傷つきやすいと知っていたのに、守ると誓った俺が一番彼女を傷つけていた。
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