恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~

11.「眞玖以上に大切な存在はいない」

腕時計に視線を落とす。

針は午後九時半過ぎを指していた。

落ち着いた内装の応接室のソファに座るも落ち着かず、ブラインドの隙間から外の景色を眺める。

匡に会いに行く決心を固めた私に、長年の友人は最後まで面倒を見てくれた。


『居場所を確認して会えるように手配するから、応接室で待っているように』


優しい指示に胸が熱くなるが、これ以上迷惑はかけられない。


『気持ちは有難いけど、これは私の、私的な問題よ。匡に連絡して、門前払いの覚悟で、会社に会いに行くから』


『こんな時間だし、自分の身の危険も考えろ。長谷部になにかあったら俺が匡に顔向けできない』


険しい表情で苦々しそうに告げる。


『残業で遅くなるのはよくあるし、心配しすぎよ。専務こそ出張帰りで疲れているでしょう? 早く体を休めて』


『ふたりが拗れたままだとこっちも落ち着かないんだよ。俺は上司である前に友人だし、心配するのは当然だ。いいから黙って待っていろよ』


渋面を浮かべながら、心優しい友人は私に応接室へ向かうよう促した。


そして、今に至る。

匡と連絡がついたのか、いつ会えるのかもわからない。

連絡を待つように指示されたが、センターテーブルに置いたスマートフォンにはなんの着信も通知もきていない。
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