恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~

3.「ただいま」

「――へえ……さすがだな」


パーティー当日、迎えに来てくれた専務はドレスを身に着けた私を見て、開口一番驚きの声を上げた。

専務の反応に、やはり似合っていないのかと心配になる。


「……ありがとうございます」


結局、ドレスの礼だけを伝えるに留めた。

繊細なレースが身頃と五分袖にあしらわれ、胸元の高い位置で細いリボンによって切り替えられたベージュのドレスは高級ブランドのものだ。

今朝早くに届けられ、高価すぎる贈りものに言葉を失った。

すぐさま専務に連絡したが『きっと似合うだろうから細かいことは気にするな』とよくわからない命令を下された。

さらに畏まる必要はないと言われたので、髪は自分で緩く巻いて整えた。


「……このドレス、いくらなんでも高価すぎていただけません」


「休日出勤手当だって言っただろ。たまには遠慮せずに甘えろよ。ほら、遅れるからそろそろ行くぞ」


一方的に会話を切り上げた専務に乗車を促される。

戸惑いを隠せないが、せっかくの厚意を無駄にはできず、それ以上は口にしなかった。

ただ心の中で、今度専務の誕生日にきちんとお返しをしようと心に誓った。















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