恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~

7.甘い恋人と小さな綻び

体がとても心地よい温もりに包まれている。

居心地の良さに思わず頬を寄せれば、そっと髪を撫でられた。


「朝から積極的だな」


甘く掠れた低音が耳に響く。


「眞玖が望むならずっとこのまま過ごそうか?」


からかうような、誘惑するような口調には聞き覚えがある。


「寝ぼけてる姿、初めて見たけど可愛いな」


――可愛い?


「おはよう、眞玖」


こめかみに触れる柔らかな感触に恐る恐る瞼を開けた私の目に、整いすぎた男性の面立ちが映る。

寝ぐせひとつない髪、甘さを湛えた綺麗な目と薄い唇に思わず見惚れてしまう。


「起きた?」


その声と姿に一気に頭が覚醒した。


そうだ私、昨日婚活パーティーに行って、そこに藤宮くんがやってきて……。


すべてを思い出した途端、体が熱をもつ。


「なにを考えているか、当てようか?」


嬉しそうに頬を緩める余裕の表情がどこか憎らしい。


私は恥ずかしさでいっぱいなのに……うろたえている自分が情けない。

普段虚勢をはっている自分との違いに呆れられたらどうしようと不安が募り、焦りで涙が滲む。


「眞玖?」


黙り込んだ私を訝しんだのか、私の顎を長い指で掬い上げた彼が目を見開く。


そんなに寝起きの私の姿が散々なのだろうか。


「……本当に、どこまで俺を惚れさせたら気が済むんだ?」


「え?」


小さなつぶやきを聞き返した途端、裸の胸に強く抱きしめられる。

直に伝わる体温と感触に鼓動が暴れ出す。
< 73 / 156 >

この作品をシェア

pagetop