恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~

8.悲しいデート

「長谷部、体調は大丈夫なのか?」


翌日出社してすぐ、専務室に呼び出された。

執務机で書類に目を通しながら専務が心配そうに問いかける。


「体調、ですか?」


「調子が悪いんだろ? プロジェクトも今はひと段落しているし、無理せず休め」


「ええと、なんのお話ですか?」


「長谷部に仕事をさせすぎだと匡が昨夜連絡してきた。体を壊しているから無理をさせないでくれってな。仕事を優先する性格だからと」


「……申し訳ございません」


仕事に口出し、私の上司に直訴する婚約者に驚いたが、心遣いが嬉しかった。


私を気にかけてくれる優しさに胸の奥がじんらわり温かくなる。

とはいえ、専務にはとんだとばっちりで申し訳なさを感じる。


「昨夜、少し会ったんです。そのとき体調を心配してくれていたので……」


「さすが匡は長谷部を大事にしているな」


「……彼が大変なときに、心配と迷惑をかけて申し訳ないのですが」


体調管理も社会人としての大切な心得だ。

朝から専務室でする話ではないと考えつつ、返答する。


「なにが、申し訳ないんだ?」


書類のサインを終えた専務が立ち上がって私を見つめる。
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