私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
9:君に棒げる想いは純なる愛 (アルベール)
「アルベール!」

 ずっとずっと、好きだった。大好きで愛しい女の子。
 彼女の名を、エルネット・トヨシーハと言う。

 あの子は黒魔術の解呪に、秀でた才能を見出された。
 天才魔術師だ。

 誰もが彼女の太陽のような笑顔に見惚れ、誰もが彼女を求めて手を伸ばした。
 でも、その手はすべて振り払われた。

「エルネット・トヨシーハは、アルベールと結婚させる」

 そんな国王の、一言によって。

 ――だけど……。

 あの子を好きになったのは、僕だけじゃなかった。
 僕と一緒に生まれた、双子の兄弟。
 レオドールは、彼女に屈折した想いを抱いている。

「貴様が憎い……」

 時折彼の口から語られる恨み節が、恐ろしくて仕方なかった。
 このままでは恨みを募らせた弟に、殺されてしまうかもしれない。

 そう危惧した僕は、弟にチャンスを与えた。

「俺とレオドール。二人のうちどちらか一人を、エルネットに選んでもらおう」

 このまま婚約者で居続けても、あの子の心は手に入らないと思ったから。

「好きにしろ」

 ーー自分から嘘をついてまで、許嫁を解消などしなければよかったのに。
 レオドールの同意を得た僕は、彼女と繋いだ手を……自ら手放した。
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