私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
2:9年前の初対面
 私が初めてレオドールと出会ったのは、アルベールの許嫁になってから3か月後のことだった。

「エルネット!」

 私の名を嬉しそうに呼ぶ金髪を視界に捉えた直後、ある違和感に気づく。

 ーー魔力が、違う……。

 アルベールは月のように凛然と輝くオーラを纏っていたけれど。
 今目の前にいる少年は、銀色の風を周囲に漂わせていた。
 変装は完璧だったけど、魔力までは擬態できなかったみたいだ。

「あなた、誰?」
「……ぼ、僕だよ。君の許嫁。アルベールだ……!」

 私の許嫁を騙る偽物は、明らかに嘘が露呈するのを恐れていた。
 そんなバレバレの変身魔法で姿を隠して、皇太子に成り代わるなんて。
 正気とは思えない。命が惜しくないのかな?

「ふーん。アルベールだって言い張るなら、もういいよ」

 普通の魔術師だったら見破れなかったもしれないけど、残念ながら私は天才だ。
 この程度の魔法なら、いくらだって解除できる。

 ーー彼の正体を知らなかった私は、指を鳴らして真の姿を暴いた。

「う……っ!」

 少年が悲鳴を上げた直後。
 パンっと何かが弾ける男とともに、彼の姿が変化する。
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