私達、犬猿の仲ですよね？ 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました！

5:どれほど嫌われようとも、君を愛している (レオドール）

　――俺達双子がエルネット・トヨシーハの名前を知ったのは、8歳の誕生日を迎えた直後だった。

「5歳の子どもが、黒魔術を解呪したぞ！」

　天才魔術師が現れたと、王城内は騒然。
　彼女の元へ、下は赤子。上は70代まで、釣書が山程届いたようだ。
　これにトヨシーハ公爵は困惑し、すぐさま王家に助けを求め――大人達の間で話し合いが行われたらしい。

「天才魔術師って噂をされている女の子。僕達の、お嫁さんになるかもしれないね」

　どんな子なんだろうと会えるのを楽しみにしている兄の言葉を耳にした俺は、白々しいと吐き捨てたくなる気持ちをぐっと堪え、胸の前で腕を組んでいるしかなかった。

　こいつと俺の間には、どれほど努力をしたとしても乗り越えられない壁が、存在していたからだ。

　皇太子として大切に育てられる王子は、たった一人だけ。
　一つしか用意していなかった椅子を求めて、二人の男児が同時に生まれてしまったら、どうなるか――これが、ご覧の有様だ。