「愛は期待するな」と宣言していたエリート警視正の旦那様に離婚届を渡したら、次の日から溺愛が始まりました

《2》

 バスに乗った後、最寄りのスーパーに寄って買い物をしてから帰宅した。
 足りない分だけ買うつもりが、あれやこれやで大きなビニール袋ふたつ分になった。非日常感に呑まれた結果、普段ほとんど飲まないお酒まで手に取ってしまった。

 夕食はカルボナーラと玉ねぎのコンソメスープ、それから昨日の通院後に暇でもりもり作り置きしておいたコールスローサラダと浅漬けも出した。この暑い季節だからこそ、温かい主食は優しく胃に収まってくれた。
 後片づけと並行して代わりばんこでシャワーを浴び、それから乾杯する。
 私自身はお酒にはあまり強くない。スーパーでお酒の棚を眺めながら、その話はすでに伝えてあった。

「私は明日お休みですけど、和永さんお仕事ですよね? 無理に私に合わせなくても」
「いや、一度君と飲んでみたかったんだ。俺自身はザルだから問題ない」
「ザルなんだ……」
「知らないことだらけだな、お互い」

 それはそうですね、と笑って頷いてしまう。

 夕食の食器を片づけたダイニングテーブルの上には、買ってきたワインとおつまみが並んでいる。
 グラスを鳴らして乾杯をしながら、今日の私たちは本当の夫婦みたいな距離感で本当の夫婦みたいなやり取りばかりしているな、と浮ついた気分になる。買い物の最中から、薄々同じことを感じていた。
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