「愛は期待するな」と宣言していたエリート警視正の旦那様に離婚届を渡したら、次の日から溺愛が始まりました

《2》

 とうとう一線を越えてしまった。
 あれから三日も経っているのに、あの日起きたことばかり、暇が許す限りひたすら考え続けている。

 なにもかもが未知すぎた。強引ではないのに逃げられないあの強烈な感覚から、私は今も抜け出せていない。
 ぐずぐずに蕩かされた身体は信じられないくらいあっさりと熱を受け入れてしまって、入ったことのないところまで届いたのに少しも痛くなくて、むしろ気持ち良くて、逆に怖くて泣きながら喘いで……達するという感覚も、昨日初めて知った。

 みっともなく蕩けていただろう顔をせめて隠したかったのに、指を絡められて手ごと退けられてしまったから叶わなかった。抵抗の隙もなくまた唇に唇を塞がれ、文字通り、私はあなたにされるがままだった。
 最中に経験について訊かれ、『ひとりと一度だけごめんなさい』と答えた。そのときのあなたの目が忘れられない。嫉妬と優越感、相反するふたつの感情が同時に滲んだあなたの視線に、私は見る間に囚われてしまった。

 好き、という本心をかろうじて漏らさずに済んだのは、あなたからそういう言葉を伝えられることがなかったからだ。
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