「愛は期待するな」と宣言していたエリート警視正の旦那様に離婚届を渡したら、次の日から溺愛が始まりました
《2》
実家のすぐ傍で比留川に待ち伏せされたこと、助けを求められたこと、有無を言わさぬ雰囲気に呑まれて車に乗せられてしまったこと、本人の口から人質と身代金の話が出たこと。
聴取に応じている間、私の傍にはずっと和永さんがいてくれた。そのせいか、対応した警察官はひどく緊張した面持ちだったと思う。
東京を離れてしばらくの間それなりに真面目に働いていた比留川は、どういう縁か、組織犯の一員として主に資金面で主犯たちの犯行に加担していたそうだ。主犯たちが捕らえられた際の現場にたまたま居合わせず、そのまま単身で逃走していたらしい。
婚約破棄以降まさかそこまで落ちぶれていたなんて、という驚きはまだ抜けない。『通報』と口にしたとき目の色を変えたのは、やはり警察に見つかるわけにはいかなかったからなのだろう。
破談後に大きく人生が変わったせいで、私や実家への逆恨みが募っていたのかもしれない。
でも、だからといって本当に私を追いかけたり待ち伏せしたり直接的な言動に出るとまでは普通思わない。そもそも、あの男は私に愛情の類を一切感じていなかったから浮気に興じていたわけで、こういう形で執着されるなんて考えてもみなかった。
うまくいかないことが続いて、その根源である私と私の実家に恨みが募ったのかもしれない。犯罪者の考えなんて、結局はうまく想像できないけれど。
聴取に応じている間、私の傍にはずっと和永さんがいてくれた。そのせいか、対応した警察官はひどく緊張した面持ちだったと思う。
東京を離れてしばらくの間それなりに真面目に働いていた比留川は、どういう縁か、組織犯の一員として主に資金面で主犯たちの犯行に加担していたそうだ。主犯たちが捕らえられた際の現場にたまたま居合わせず、そのまま単身で逃走していたらしい。
婚約破棄以降まさかそこまで落ちぶれていたなんて、という驚きはまだ抜けない。『通報』と口にしたとき目の色を変えたのは、やはり警察に見つかるわけにはいかなかったからなのだろう。
破談後に大きく人生が変わったせいで、私や実家への逆恨みが募っていたのかもしれない。
でも、だからといって本当に私を追いかけたり待ち伏せしたり直接的な言動に出るとまでは普通思わない。そもそも、あの男は私に愛情の類を一切感じていなかったから浮気に興じていたわけで、こういう形で執着されるなんて考えてもみなかった。
うまくいかないことが続いて、その根源である私と私の実家に恨みが募ったのかもしれない。犯罪者の考えなんて、結局はうまく想像できないけれど。