「愛は期待するな」と宣言していたエリート警視正の旦那様に離婚届を渡したら、次の日から溺愛が始まりました

《2》

 昨晩の夕飯は、朝に食べられるだけ食べてきた。
 気合を入れて作った重めのメニューばかりだったから、まだ半分以上冷蔵庫に残っているけれど。

 職場まではバスで通っている。
 午前八時過ぎ、バスを降り、私は職場までの道を進んでいた。

 昨日の夕食はもう全部捨てようかと思っていたけれど、衝動に任せてそんなことをせずに済んで良かった。食べ物に罪はないし、もっと言うなら私以外の誰にもそんなものはない。
 私が、出すぎた真似をしてしまっただけだ。

 和永さんには、彼の分の食事の支度は必要ないと結婚前から言われている。
 彼自身、元々食事は外食中心だったらしく、自分の分だけ作るなり外食するなり外注するなり好きにしてください、と。

 だから自由にさせてもらっている。
 もちろん、スーパーやコンビニでお弁当を買って済ませる日もあるけれど、私は昔から自分でご飯を作るのが大好きだ。だから、休日には買い出しに行ったり、作れるだけ作り置きを作っておいたり、独身の頃は高くて手を出すのをためらっていた食材で新しいレシピに挑戦したり、やりすぎかな、とときおり心配になることもあるくらい自分なりに楽しんでいるつもりだ。
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