「愛は期待するな」と宣言していたエリート警視正の旦那様に離婚届を渡したら、次の日から溺愛が始まりました

《2》

「珍しいですよね、能見さんが日曜にお休みほしがるなんて」

 同僚の(いた)()さんからほんのりと嫌味の滲む探りが入り、私は分かりやすく苦笑いを返してしまう。

 月曜。開院前のうちにと、彼女と休日のシフトを交換してもらった後だ。
 板戸さんはなんだかんだ文句を言いながらも応じてくれた。私が普段土日の出勤を厭わない分、日頃彼女は週末に休みやすいという恩恵を受けているはずなのだけれど、まぁあれこれ文句めいたことを零しながらも最終的には了承してくれた。

 無事に休みをずらせてほっとした。
 いくら向こうからの提案とはいえ、あの仕事人間の和永さんに平日休ませるのは気が引ける。

「なんかあるんですか、次の日曜?」

 まだ不服なのか、しぶとく尋ねてくる板戸さんに、私は曖昧に笑って返すに留めた。
 彼女は、私がここで働き始めた頃に仕事を教えてくれた、私よりも年下の先輩同僚だ。性格はこの通りで、ややきつい印象がある……ただ。
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