離婚とか愛とか~鉄の女社長は極上夫に絆される~
結婚前から離婚がしたい
山城絢乃(やましろあやの)の結婚話は着実に進んでいる。

ここは都内の老舗ホテル内にある料亭で絢乃と婚約者、双方の親族が集まり顔合わせの食事会が開かれている最中だ。

シャクヤクの生け花が飾られた広い座敷には大きな座卓が置かれ、絢乃の側は両親と親戚がふたり、彼の側は母親と叔父夫婦、合計九人で話していた。

上品な懐石料理が一品ずつ運ばれてきて、今は四品目の旬魚のお造りだ。

あと六品も食べなければならないのかと思うと憂鬱になる。

新鮮な太刀魚を義務的な気持ちで食べながら、作り笑顔をキープしていた。

(早く終わってくれないかしら。このあと仕事があるのよ)

「それにしても絢乃さんはおきれいで。才色兼備とは絢乃さんのためにあるような言葉ですね」

そう言ったのは、絢乃の斜め向かいに座っている婚約者の叔父だ。

卵形の顔にすっきりとした目鼻立ち、可愛らしさはないので褒めるとしたら『おきれい』なのかもしれないが、自分では美人だと感じない。

取引先の男性からクールビューティーと褒められて不快に思ったことならある。

百六十五センチのスレンダーな体にまとうのは、オフホワイトの膝丈タイトスカートのツーピース。

ストレートの長い黒髪はひとつにまとめ、アクセサリーはシンプルな真珠の一連のネックレスのみをつけていた。

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