離婚とか愛とか~鉄の女社長は極上夫に絆される~
同じ気持ちでいたい
平日の十時半。社内会議は絢乃の日常だ。

三階の会議室には今日も馬蹄形にテーブルが組まれているが、出席者の顔ぶれがいつもと違う。

事業部の管理職と絢乃の他に、立花リアルエステイト社から五人が来ている。

そのひとりは昴だ。

彼の会社との共同プロジェクトが発足したばかりで、今日は会議というより顔合わせである。

前方のスクリーンには大型複合施設の完成イメージ図が映されていた。

地下一階から三階にスーパーマーケットと保育園と学習塾、内科と小児科のクリニックを誘致する予定でいる。四階以上は分譲マンションだ。

その建物だけで生活できるのを売りにして、子育て世代をターゲットに販売したい。

山城建設が建てて誘致と販売は立花リアルエステイトが請け負うというプロジェクトで、二年後の着工を目指していた。

絢乃と昴の結婚で二社の関係性や信頼が深まったからこそ可能となった。

挨拶を交わしてから初期段階のイメージ図をもとに話し合う。

「我が社の希望をお伝えしましたが、立花社長はどのようにお考えでしょうか?」

絢乃が昴に作り笑顔を向けた。

仕事なので馴れ馴れしい呼び方はしない。

昴もこの場では、『山城社長』と絢乃を呼ぶ。

名刺は旧姓のままにしていた。

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