初めまして皇帝陛下。どうぞ離婚してくださいませ〜3年放置された花嫁は離婚を突きつける〜

第十六章 タイムリミット

 それからは、戦もなく、ヴォルフが宮殿にいる生活が続いた。

 ヴォルフがいて、クリスティーナさまがいて、ハンスがいて、私がいる。家族がみんな揃って、幸せな生活だ。

 だけど私の心には次第に憂いが陰っていた。

 もう少しで、約束の一年になろうとしていたのだ。

 ──離婚の時が近づいている。

 だけれど、子供が出来た気配はついぞ感じられなかったのである。

 賭けには勝とうとしているのに、嬉しくないなんて。

 私は、陛下を愛している。

 陛下も私を愛していると言ってくれる

 共にいたいと思っている。

 でも、あの誓約書はどうすれば? あれは神に誓ったもの。そう簡単に覆すことなど出来ないだろう。

 ぽろり、と私の頬を涙が伝う。

「あ……、私どうしたのかしら……」

 ぽろぽろぽろぽろと涙が溢れて止まらない。

「どうしてあんな誓約してしまったんでしょう……」

 そうして私は顔を手で覆い、肩をふるわせて泣くのだった。
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