氷壁エリートの夜の顔
第22話 誤解 結城颯真の視点
感情を仕事に持ち込まない──それが俺のルールだった。
でも──彼女を初めて見た瞬間、その境界線が、わずかに揺れた気がした。
最初の印象は「きれいな人」だった。
飾らない感じなのに、なぜか目を引く。
染めていない髪をすっきりとまとめ、メイクも控えめ。作り込まないその姿から、不思議な誠実さがにじんでいた。
恋愛体質で、遠距離の彼氏に貢いでいる──そんな噂も聞いていた。
だが、一緒に仕事を重ねるうちに見えてきたのは、それとはまったく違う彼女の素顔だった。
彼女はたぶん、意識的に「オフィス用の笑顔」を使い分けているつもりなのだろう。
でもその裏にある無防備な表情が、会話の端々にちらちらと覗く。
とくに、女友達と笑い合っているとき。あるいは──八木さんと話しているとき。その瞬間だけ、彼女は誰よりも自然な顔をしていた。
そして本人は、たぶんそれに気づいていない。そこも、どこか面白い人だと思った。
とはいえ、俺は社内で誰かと関係を持つつもりはなかった。
過去に懲りていたし、私情を職場に持ち込む面倒は避けたい。
でも──彼女を初めて見た瞬間、その境界線が、わずかに揺れた気がした。
最初の印象は「きれいな人」だった。
飾らない感じなのに、なぜか目を引く。
染めていない髪をすっきりとまとめ、メイクも控えめ。作り込まないその姿から、不思議な誠実さがにじんでいた。
恋愛体質で、遠距離の彼氏に貢いでいる──そんな噂も聞いていた。
だが、一緒に仕事を重ねるうちに見えてきたのは、それとはまったく違う彼女の素顔だった。
彼女はたぶん、意識的に「オフィス用の笑顔」を使い分けているつもりなのだろう。
でもその裏にある無防備な表情が、会話の端々にちらちらと覗く。
とくに、女友達と笑い合っているとき。あるいは──八木さんと話しているとき。その瞬間だけ、彼女は誰よりも自然な顔をしていた。
そして本人は、たぶんそれに気づいていない。そこも、どこか面白い人だと思った。
とはいえ、俺は社内で誰かと関係を持つつもりはなかった。
過去に懲りていたし、私情を職場に持ち込む面倒は避けたい。