氷壁エリートの夜の顔
第10話 まさかの場所で 結城颯真の視点
日本支社に戻ってすぐ、A社のブランド再構築プロジェクトを任された。
サブに入るのは、社内でも「最強のサポート役」と評判の人材らしい。
「桜くんは、とにかく仕事が早くて丁寧なんだよ。だけど、ここだけの話、彼女のモチベーションって定時で帰ることっぽいんだよね。まぁ、彼女も合理的で優秀だから、君もやりやすいと思うよ」
事前の打ち合わせで、神崎課長はそう言っていた。
桜咲──ちょっと変わった名前だ。春生まれなのだろうか。でも、その名前の由来を自分が知ることは、きっとないのだろうとも感じた。
戦略経営部に挨拶へ向かう前、時差のせいでぼんやりする頭をスッキリさせようと、ガーデンテラスに出た。東京の秋の空は思ったより澄んでいて、俺は薄く広がる雲を見上げながら小さく息をつく。
そのとき、すぐ後ろのベンチから声が聞こえてきた。
「そういえば、咲さん、佐藤さんから告白されて断ったらしいよ。彼氏がいるからって」
「咲さんって、桜さん? 戦略経営部の?」
聞き覚えのある名前に、俺は思わず耳を傾けた。
サブに入るのは、社内でも「最強のサポート役」と評判の人材らしい。
「桜くんは、とにかく仕事が早くて丁寧なんだよ。だけど、ここだけの話、彼女のモチベーションって定時で帰ることっぽいんだよね。まぁ、彼女も合理的で優秀だから、君もやりやすいと思うよ」
事前の打ち合わせで、神崎課長はそう言っていた。
桜咲──ちょっと変わった名前だ。春生まれなのだろうか。でも、その名前の由来を自分が知ることは、きっとないのだろうとも感じた。
戦略経営部に挨拶へ向かう前、時差のせいでぼんやりする頭をスッキリさせようと、ガーデンテラスに出た。東京の秋の空は思ったより澄んでいて、俺は薄く広がる雲を見上げながら小さく息をつく。
そのとき、すぐ後ろのベンチから声が聞こえてきた。
「そういえば、咲さん、佐藤さんから告白されて断ったらしいよ。彼氏がいるからって」
「咲さんって、桜さん? 戦略経営部の?」
聞き覚えのある名前に、俺は思わず耳を傾けた。