自分から身を引いたはずなのに、見つかってしまいました!~外交官のパパは大好きなママと娘を愛し尽くす
エピローグ
 夫婦になった私たちは、十歳とちょっと歳を重ねた。その間に絢斗さんは念願の大使になれた。大使館には大使専用の公邸が用意されていて、そこに大使とその家族が住むことになっている。

「ママー! 莉音(りおん)がまた転んだ!」
「もう、家の中で追いかけっこしないの!」
「だって、勉強してるのに莉音が消しゴムとかノートを奪って逃げていくんだもん!」

 絢音も中学一年になり、八歳になる弟の莉音もいる。家族が増えて賑やかな毎日だ。子どもたちの活発な声が家の中に響き渡り、まるで私たちの家庭が一つの小さな冒険の舞台になったかのようだ。

「こら! 仲良くしててね!」

 近々行われる予定の文化交流の準備のため、私はPCを使ったりして調べ物をしていた。文化交流は日本の伝統や文化を紹介するイベントにおいて、料理や手作りの品を通じてもてなすことになるので、今のうちから何の料理にするのか、お目当ての日本の食材は手に入るのか……など色々と調べている。

 リビングの明るい光が入る大きな窓からは、穏やかな庭が見える。私はその景色を眺めながら、ふと幸せを感じていた。
 今、私たちの生活は家族も増えて、我が家にはみんなの笑い声が広がっていく。

 私はリビングで作業をしていたが、絢音と莉音の二人は近くを行ったり来たりしていて落ち着かない。
 子どもたちの目には、日常の些細な出来事がまるで大きな冒険のように映っているのだろう。時折、莉音が絢音の髪を引っ張ったり、絢音が莉音を追いかけ回したりする様子は、まるで小さなドラマのようだった。

「賑やかだな」

 書斎で仕事をしていたはずの絢斗さんが、リビングに顔を出した。微笑みながら現れた絢斗さんの表情は、家庭の平和を大切に思っているのが伝わってくる。

「あっ、パパ! 莉音がね……」
「絢ちゃん、ずるい! 僕ばっかり悪者にして!」

 二人は英語も話せるので、喧嘩は日本語から英語へと変化していく。
 言葉の壁を越えて、彼らの小さな争いはますますヒートアップしていた。その様子を見ながら、家庭の中で育まれる愛情や絆が、私たちの日常を特別なものだと感じていた──

 END
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