自分から身を引いたはずなのに、見つかってしまいました!~外交官のパパは大好きなママと娘を愛し尽くす
第2章
 約二週間ぶりに日本に帰国した。フィンランドの首都ヘルシンキを夕方に出発する飛行機に乗り、時差の影響で日本には翌日の午後に到着した。
 長旅の疲れを感じつつも、私の頭の中は絢斗さんのことばかりが巡る。無事に空港に辿り着き、私はまず絢斗さんに電話をかけることにした。

『明莉? 帰国したの?』

 何回かのコールの後、絢斗さんは電話口に出た。彼の声を聞いた瞬間、じんわりと心が温かくなる。彼が私の帰国を待っていてくれたことが嬉しくてたまらない。

「今、成田に着きました! これから帰宅する予定です」

 私の声には自然と笑みが混じり、心の高揚感が勝手に溢れ出てしまう。

『おかえり。夜になってしまうけれど会えるかな?』

 彼の優しい声が耳に響き渡り、私を身体ごと包み込むような感覚がした。

「もちろん!お仕事終わったら連絡ください」
『了解!一旦切るね』

 名残惜しいが電話を切った。ほんの僅か、絢斗さんと話しただけなのに、益々会いたくなってしまう。夜には会えるという期待で胸が高鳴り、キャリーケースを引っ張りながら急ぎ足で空港の外へ向かう。何日ぶりかで会える絢斗さんの顔を思い描きながらの足取りは、非常に軽かった。

 空港の外に出ると、清々しい青空が広がり、冬の澄んだ空気が身体を包む。
 十二月なのに寒く感じないのは、先日までフィンランドに居たからかもしれない。
 冷たい北風を思い出しつつも、心は温かい。もしかしたら、絢斗さんに会いたくて浮き足立っているせいかもしれないけれど……「明莉!おかえりー!」

 駐車場に着くと、幼なじみの親友であり、私がバイヤーとして働いている輸入雑貨店の社長でもある東郷美緒(とうごうみお)が、笑顔で迎えてくれていた。

「ただいまぁー美緒!」

 私も笑顔を返し、二人の再会を祝うように、心からの言葉を投げかけた。
 私は美緒をぎゅっと抱きしめると、彼女も力強く抱き返してくる。
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