真夜中のおくりもの - お夜食お届けします - 【短編集】

第2夜

- きみって、何も考えてないよね。

と、
ダンス講師の先輩に言われた。
俺はとっさに何と返して良いかわからず、
つい、
- そうっすね。
へらへら笑いながら、そう答えてしまった。

動画を編集していると、永遠に終わらない気がする。

季節が春になって、昼間は初夏みたいにじわじわとした暑さなのに、朝夕は真冬に戻ったみたいに寒い。
生活費節約のため暖房と照明の使用を控えた、凍えそうなほど寒い深夜の部屋で水色の厚い毛布にくるまりながら、
間接照明とデスクトップ・パソコンの明かりだけで作業を続けている。

今、編集しているのは、
明日、大手動画サイトにアップするつもりのダンス動画で、
フィンガー技やコークスクリューなどの新技ムーブを取り入れたものだった。
俺は、歌ったり踊ったりした動画を動画サイトにアップして広告収入を得たり、
家の近くのダンス教室でダンスを教えたり、絵画教室で絵を教えたり、
家でオブジェや彫刻を作り、絵を描いて売ったりして生活している。
東京市内はずれにある鉄筋コンクリート造りの1DKアパートは居心地は悪くないが、日々、作品が増えているので手狭になってきた。
お金が貯まったらもっと広いところへ引っ越そうと思うのだが、
となりに住んでいる同い年のやつがその話しになるたびに、
捨てられたネコみたいな顔になるので、今のところ保留にしている。
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