幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】

第21話 安らぎは恋じゃない?

電車の窓ガラスに映る私は髪はぼさぼさで疲労感が最大値まで振り切れた姿をしていた。
周りも残業帰りの人や飲んだ後のサラリーマンが多く、似たような姿だったことが唯一の救いだ。
―――すごく疲れた。
梶井さんと話すと生気を吸い取られてしまうような気がしてならない。
全力投球というか、全力ダッシュっていうか。
気が抜けない。
よろよろとしながら電車を降りて駅を出たところでスマホが点滅していることに気づいた。

「うん?逢生から?」

『人質はいただいた』
人質―――!?
そのスマホ画面の向こうには私のプリンがあった。
『そよか』とご丁寧に名前が書いた箇所をバッチリ写して。

「わっ、私のプリンちゃんがぁぁぁっー!」

カッと目を見開き、マンションまでの道を猛ダッシュした。
カカッと暗証番号を入力し、ロックを解除してマンション内に入るとエントランスを走り抜け、エレベーターのボタンとバシッと押す。
いつもなら、遅いなんて思わないのにエレベーターのドアが開くまでの時間すらもどかしい。
エレベーターの中でスマホを確認すると新たな画像が送られてきた。
人質(プリン)の横にスプーンが置かれている。
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