幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】

第29話 たとえるなら

「……奏花(そよか)ちゃん。奏花ちゃん、起きないとキスするよ?」

私の名前を呼ぶ声に目を覚ますと梶井(かじい)さんの顔が目の前にあった。

「ぎゃっー!!」

ズサッと梶井さんから離れると、ばっと身構えた。

「まだなにもしてないけど」

笑ってる梶井さんはまだ熱っぽい顔をしていて目が潤んでいた。
私が買ってきた水を飲みながら、だるそうにソファーにもたれていた。
そんな姿なのにいつもより色気がある。
むしろ、そんな姿だから?

「看病してくれたんだ?」

「たいしたことはなにも……」

「いや、ありがとう。助かったよ」

時計を見るとそんなに時間は経ってなかった。
うっかり眠ってしまった自分に反省し、立ち上がった。

「なにか作りますね。何も食べてないですよね」

「レトルトのおかゆでいいよ」

「また床に倒れられていると目覚めが悪いので、ちゃんとしたものを食べてください」

「女性に説教されるのって母さん以来だな」

どんな生活を送ってきたらそうなるのよ……尽くされる一方ってこと?
買ってきた食材を手にして冷ややかな視線を送った。
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