幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】

第4話 向こう側【逢生】

誰が俺と一緒にいてくれるんだろう。

『いい子にしてるのよ』

逢生(あお)はもう大きいもんな。もうお留守番だってできるよな』

両親は俺が一人で留守番すると、いい子だって褒めてくれる。
だから、俺はいつも二人に『いってらっしゃい』だけを言う。
寂しいとか、俺を一人にしないでって言わないようにしていた。
言ってしまえば、俺はいい子じゃなくなるから。
暗い部屋に一人テレビをつけて毛布をかぶった。
一人は怖い。
ちらりと見える隣家の灯りが俺の心の支えだった。
家の灯りはあそこに誰かいてくれるんだとわかる―――だから少しだけ安心できる。
リビングのカーテンの隙間からお隣の家を見るとホールサイズのケーキがあってチキンや温かそうなスープなんかが用意してある。
こっちとあっちじゃ世界が違うみたいだ。
向こうはすごく明るい場所なのにこっちは真っ暗だ。
カーテンを握りしめたまま、その幸せそうな光景を眺めていた。
俺はあちら側にいけない。
そう思いながら、ごろんと床に横になった。
テレビをみるみたいに明るい場所を眺めてた。
飽きもせず。
< 19 / 213 >

この作品をシェア

pagetop