幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】

第8話 違い

全ての曲とアンコールの曲が終わった―――席にはまだコンサートの余韻を楽しむお客さん達が座ったままだ。
私も集中して演奏を聴いたせいか、頭がぼうっとしてしばらく動けなかった。

「素敵だったわね」

寿実(すずみ)に声をかけられて、やっと頭がはっきりしてきた。
ドラマチックな映画を観た後のような感覚の退屈させないコンサート。
―――聴き入ってしまう音。
身内びいきかもだけど、逢生(あお)の音が一番好きだと思った。

「幼馴染み君―――逢生君のこと好きになったんじゃないの?」

寿実の中でも『幼馴染み君』から『逢生君』にグレードアップされたようだ。
でもね。

「逢生は逢生よ。それとこれは別!」

ハンターはすぐそうやって恋愛に結びつけるんだから。
はー!恐ろしいったらないわ。

「それより、寿実。帰りになにか食べてく?」

「ごめん!奏花(そよか)弘部(ひろべ)君の仕事が終わるのを待って一緒に夕飯を食べに行こうと思ってるの」

「そんな約束してたの?」
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