未亡人ママはスパダリ義兄の本気の愛に気付かない

『スーパー三つ葉』とスパダリの影


『スーパー三つ葉』に着いた椿は、スタッフ用の休憩室にある自らのロッカーから濃紺のエプロンを取り出し、素早く身につけた。

エプロンの胸の部分には、黄色い文字で『スーパー三つ葉』と書かれてある。

セミロングの黒髪を後ろ一本にゴムで結び、やはり濃紺の帽子を被っていると、同僚のスタッフである吉村幸枝(よしむらゆきえ)から声を掛けられた。

「久我山さん。おはよ。」

「吉村さん。おはよう。」

採用時期も年齢も近い幸枝は、このスーパーの中で一番気安く接することが出来るスタッフ仲間だ。

「ねえ。聞いてよ。今日もウチの旦那さあ、ゴミ出し頼んだのに忘れやがって。帰ったら散々文句言ってやるんだから。」

「そうなんだ。それは困るよねえ。」

でも旦那さんが元気にいるだけで、私は羨ましいけどな。

そんな言葉を椿は飲み込んだ。
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