未亡人ママはスパダリ義兄の本気の愛に気付かない

久我山家の秘密


冷たい秋雨が木々の葉を濡らす土曜日の夜、久我山家で沙織の世話をしていた看護師の田之倉陽子が椿を訪ねてきた。

翔真と龍は、いつものように絵画教室へ行っている。

私一人の対応で良いのだろうか?

そう思いながら椿は陽子を部屋へ招いた。

「すみません。部屋が散らかっていて・・・。」

椿は翔真の積み木や絵本を棚の中へ片づけた。

「いいえ。突然押しかけたのは私の方なのですから・・・。お気を使わないで下さい。」

椿はそう恐縮する陽子に座布団を勧め、お茶を入れた。

「先日はお世話になりました。」

椿がそう頭を下げると、陽子が恭しく答えた。

「こちらこそ・・・翔真君とお会いしてから奥様のご機嫌がずっとよろしくて・・・。」

「そうですか。それは良かったです。」

「これ、つまらない物ですが。」

陽子が菓子折を椿に手渡した。

「わざわざありがとうございます。」
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