未亡人ママはスパダリ義兄の本気の愛に気付かない
本当に欲しかったのは
椿があの写真を渡してから、龍の様子がおかしい。
いつもと同じように明るく振る舞ってはいるが、ふとどこか遠くを見るような表情を浮かべることが多くなった。
しばらくして椿が龍から意外な申し出を受けたのは、初冬の冷えた空に満月が浮かぶ夜のことだった。
「椿さん。俺の絵のモデルになってくれない?」
「え・・・私が?」
「ああ。」
龍さんが私をモデルに絵を描きたいだなんて・・・
椿はあえてもったいぶってみた。
「えーどうしようかな?」
てっきりいつものように「頼む!」などと軽く言ってくるかと思ったのに、龍の顔は真剣そのものだった。
「今の椿さんを俺の絵で残したいんだ。」
思い詰めたような表情の龍に、椿も素直に頷いた。
「うん。描いて欲しい。龍さんに・・・私の絵。」
「・・・良かった。」
龍はホッとしたようにつぶやいた。