未亡人ママはスパダリ義兄の本気の愛に気付かない
翔真の才能
その日は運良く定時で仕事を上がれ、椿は急いで翔真を迎えにささむら保育園へと急いだ。
暗い園庭の向こうに、灯りが点いたパステルピンクの建物が見える。
もうほとんどの園児は保護者と一緒に帰宅している。
この時間に園に残っている子供は数人しかいない。
心細く自分を待っている翔真を思い、お迎えのときはいつも椿の胸が痛む。
園に入ると、翔真は数人の子供達と積み木で遊んでいた。
「翔ちゃん、ただいま!」
「ママ、お帰り。」
翔真は椿の顔を一瞥し、また積み木の方へ視線を移した。
翔真が積み木で作っているのはお城だろうか?
随分複雑な組み立て方をしていて、翔真はそれを完成させることに夢中なようだ。
ちょっと前までの翔真は一目散に椿に駆け寄って抱きついてきたのに、最近はなんだかつれない。
椿は膝を立て、自分から翔真を抱きしめた。
「翔真、いい子にしてた?」
「まあね。」
「今日は何したの?」
「絵本を読んだ。」
「何の絵本?」
「桃太郎。桃に赤ちゃんが入ってるなんて非現実的だよね。笑っちゃうよ。」
「・・・・・・。」
翔真のシニカルな感想に、椿は目が点になった。