未亡人ママはスパダリ義兄の本気の愛に気付かない
冷たい雨と差し出された傘
ささむら保育園の保育士である真名から椿のスマホへ連絡が来たのは、蝉の声が響く暑い夏の日の午後のことだった。
保育園から電話が来るときは、よほど緊急の事態が起きたときだ。
翔真が高熱を出したのだろうか?
それとも怪我をしたのだろうか?
翔真の身を案じ、椿の心は不安で溢れそうになっていた。
「もしもし。いつもお世話になっています。久我山です。」
つとめて冷静な声を出したつもりだったが、椿の声はかすかに震えていた。
「あ、久我山さんですか?花田です。お忙しいところご連絡してすみません。」
いつもは明るい真名の声が、今日は真剣味を帯びていた。
「あの・・・非常に申し上げにくいのですが・・・」
一瞬の沈黙の後、真名の声のトーンが低くなった。
「翔真君がお友達とケンカしてしまい、相手の子が足を捻挫してしまいまして・・・」