フランス人彼氏が甘すぎて、血糖値が心配です。

はじまりは、冬。

あれは、ある年のクリスマスイブのことでした。

独身の私は、ベッドに沈みながら、天井を眺めてぼんやり考えていました。

──ああ、さみしい。天井が優しい。

すると突然、脳内にフラッシュバック。
大学時代にちょこっとかじったフランス語の記憶が蘇ったのです。

「Je…なんとかって、どういう意味だっけ……?」

そしてなぜか湧きあがるやる気。

「放置してたけど、ちょっと勉強してみようかな〜♪」

この思いつきが、人生を変える一歩になるとは知らずに。

さっそく、国際交流アプリをインストール。
軽率すぎるワンクリック。けれど、運命はそこから始まりました。



アプリには、日記を書いたり、いろんな国の人にメッセージを送れたりする機能が。

でも、当時の私のフランス語力は“Bonjour”止まり。
「いきなりフランス人に話しかけるなんて無理ムリ!」と尻込みしていた、そのとき。

届いたのです。一通のメッセージ。

──彼から。

アイコンはぼんやりとした遠目の写真。自己紹介は、あっさり。
日本語を勉強しているとのことで、フランスの某都市に住んでいると。

その地名を見て、私はスマホを持つ手を止めました。

(……えっ、そこ、私が昔旅行で行ったとこじゃん!?)

奇跡のシンクロ。
すかさず「行ったことあるよ〜!」と写真を送ると、彼もびっくり。
そこから、一気に会話は弾みました。



以来、毎日トーク。毎日チャット。
時差?知りません。もう感覚がバグるくらい、話が続いたのです。

そして、ある日。
「今日、何してるの?」と聞いた私に、彼がさらっと言いました。

「詩を書いているよ」

……ポエム!?
現代に生きる、詩を書く男性!? それってレア生物では!?

「ノートに書いてる」と聞いて、見せてもらったその筆跡に、
私は心を撃ち抜かれました。

字、美しすぎて事件。
カリグラフィー?いえ、これは芸術作品です。

その瞬間、私の中の「乙女エンジン」が全開に。

「サインください!!!」

即・懇願。すると彼は、ひとこと。

「じゃあ、はがきを送るよ」

あっさりすぎて逆に戸惑う。
(えっ、まさかの直筆サイン入りはがき……?)

内心ドキドキしながらも、
「まぁフランスだし遠いし、なんとかなるでしょ♪」という超・楽観思考で、
私は住所を教えてしまいました。

──はい。文通、始まりました。

※あぶないので真似しないでください♡
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