フランス人彼氏が甘すぎて、血糖値が心配です。

ハグで、息ができなくなる日が来るなんて。

国際恋愛、とくに欧米の方との恋といえば——
人前でハグやキスをするのが自然。
そんなイメージ、きっと多くの方が持たれているのではないでしょうか。

その印象、私の実感としても……
間違っていません。

初めて彼と会った日から、そうでした。
遠慮のない、大きなハグ。
まるで、こちらの呼吸を忘れてしまいそうになるほどの。

そのとき私たちは、文通を重ね、心の距離は近づいていたものの──
実際に顔を合わせるのは、その日が初めてでした。

ですから正直、
「ハグはあっても、軽く触れる程度かな?」なんて思っていたんです。

──甘かったようです。

彼にとって、あれは挨拶ではありませんでした。
それはまさに、感情をまっすぐにぶつける「再会の抱擁」でした。

私を見つけるやいなや駆け寄ってきて、
「しろさん!」と呼ぶか呼ばないかのタイミングで──その腕が、私をしっかりと包み込みました。

その瞬間、私が思ったこと。

ときめき? 感動?

いえ、率直に言えば、

「息ができない……!」

でした。

というのも、彼とは約40cmの身長差があり、
抱きしめられると、私の顔はぴったりと彼の胸の中におさまってしまうのです。

それはそれは、温かくて安心する場所……なのですが、
呼吸の手段が、完全に失われました。

「死因:ハグ」という言葉が、ふと頭をよぎったほどです。

そして、ようやく彼の腕がゆるんだと思った次の瞬間。

今度は、頭の上にキスの嵐が降ってきました。

驚く間もなく、私は静かに悟ります。
「ああ、これが……カルチャーショック」

まさに国際恋愛の“洗礼”でした。

その後、私たちは正式に恋人になりましたが、
彼の情熱的な愛情表現には、いまだ慣れません。

慣れる日が来るのかどうか、
そもそも、慣れてしまってよいのかも、わかりません。

でもきっと、そんなひとつひとつの違いに戸惑いながら、
ふたりのかたちを作っていくのだと思います。

静かなカルチャーショックは、今日も続いています。

< 9 / 15 >

この作品をシェア

pagetop