年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない

曇り空の決意

鷹野君と月兎で会った日から、なにも考えがまとまらないまま、一週間が経過していた。今日も仕事の私は、スマホのアラームを止めて、薄暗い部屋の中で静かに息を吐いた。

大きな家ではあるけれど、私の部屋は日当たりの悪い北向きの部屋だ。晴れていても薄暗いことがあるが、ブラインドを少しだけ開けて外を見ると、灰色がかった空が広がり、今にも雨が降りそうな気配が漂っていた。

「まだ梅雨、明けないのか……」

七月も半ばに入り、例年なら梅雨明け間近。それなのに、今日もどんよりとした空が広がっていると知った私は、気持ちまで重くなる気がした。もともと悩みが尽きないのに、この天気では余計に気が滅入る。

今、鷹野君がどういうつもりでいるのかはわからないが、あの日はアルコールも入っていて、私はかなり際どい会話をしてしまった気がする。家の事情を話すなんて、父に知られたらまた怒られるだろう。それに、沙羅の話まで持ち出して、卑屈な発言をしてしまったことも後悔している。

「しばらくお酒はやめないとね……」
今日は家政婦の三谷さんが休みの日。母は家事をしないし、沙羅ももちろん手伝うことはない。だから、自然と私が朝食を準備することになる。

寝ぼけた身体を引きずるように部屋を出ると、家全体がひんやりと静まり返っていた。誰もいない廊下を歩き、キッチンへ向かう。
エプロンを手に取り、冷蔵庫を開けて食材を確認しながら、簡単なメニューを考える。卵焼き、焼き魚、味噌汁……いつもと変わらない朝食だ。