キスはボルドーに染めて
水をさされる心
「び、びっくりした……」
陽菜美は掃除用具が置いてある倉庫に駆け込むと、ドキドキと鳴り響く心臓を抱きしめるようにしゃがみ込む。
頭の中では、ついさっきまでの出来事がぐるぐると巡っていた。
陽菜美の腕には、まだ蒼生に抱きしめられた感覚がまざまざと残っている。
「蒼生さんが私のこと、特別だって言ってくれた……」
陽菜美は浅く息を吸うと、蒼生の唇がかすめた口元にそっと指を当てる。
あのまま杉橋が入って来なかったら、一体どうなっていたのだろう。
あらぬ方向に想像が向かい「きゃ……」と声にならない悲鳴を上げた陽菜美は、慌ててスティックタイプの掃除機を掴むと倉庫を飛び出した。
もうとっくに退社時刻を過ぎた廊下は、しーんと静まり返っている。
陽菜美は掃除機を抱えたまま、薄暗い廊下を進んだ。
どこかのフロアにはまだ人が残っているのか、ぼそぼそと話す人の声が、かすかに聞こえてくる。
その声をぼんやりと聞きながら、陽菜美は掃除機を持つ手にぎゅっと力を込めると、再び蒼生の顔を思い出した。
陽菜美は掃除用具が置いてある倉庫に駆け込むと、ドキドキと鳴り響く心臓を抱きしめるようにしゃがみ込む。
頭の中では、ついさっきまでの出来事がぐるぐると巡っていた。
陽菜美の腕には、まだ蒼生に抱きしめられた感覚がまざまざと残っている。
「蒼生さんが私のこと、特別だって言ってくれた……」
陽菜美は浅く息を吸うと、蒼生の唇がかすめた口元にそっと指を当てる。
あのまま杉橋が入って来なかったら、一体どうなっていたのだろう。
あらぬ方向に想像が向かい「きゃ……」と声にならない悲鳴を上げた陽菜美は、慌ててスティックタイプの掃除機を掴むと倉庫を飛び出した。
もうとっくに退社時刻を過ぎた廊下は、しーんと静まり返っている。
陽菜美は掃除機を抱えたまま、薄暗い廊下を進んだ。
どこかのフロアにはまだ人が残っているのか、ぼそぼそと話す人の声が、かすかに聞こえてくる。
その声をぼんやりと聞きながら、陽菜美は掃除機を持つ手にぎゅっと力を込めると、再び蒼生の顔を思い出した。