キスはボルドーに染めて

蒼生の決意

 眩しい朝日が頬をくすぐり、陽菜美は重たい瞼をゆっくりと押し上げる。

 ぼんやりと昨夜(ゆうべ)の記憶を辿っていた陽菜美は、自分が蒼生の腕の中で目覚めたことに気がつき、ボンっと沸騰するように顔を真っ赤にした。

 慌てて隣を振り返ると、まだ眠っている蒼生の顔が目の前に飛び込んで来る。

 あまりに整って綺麗すぎる寝顔に、陽菜美は悶えるように身をよじらせると、まじまじと蒼生の顔を覗き込んだ。

 蒼生は熟睡しているのか、すーすーと気持ちよさそうな寝息が一定のリズムで漏れ聞こえる。


「寝顔まで、素敵すぎる……」

 陽菜美はきゅんとしたまま、しばらく蒼生の顔を見つめていたが、途端に昨夜の甘くて濃いひと時が思い出され「きゃあ」と再び悶えるように両手で顔を覆った。

「蒼生さん、すごく優しかった……」

 何度も熱く求められた感覚がうずく自分の身体に、あの幸せな出来事は夢ではなかったのだと実感する。

 陽菜美は「ほう」と熱っぽい息をつくと、そっと手を伸ばして蒼生の黒い髪に触れた。
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