キスはボルドーに染めて

三年前の続き

「陽菜美ちゃん!? 大丈夫!?」

 陽菜美は突然肩を抱きかかえられ、はっと顔を上げた。

 驚いた様子で顔を覗き込ませているのは杉橋だ。

「ご、ごめんなさい。急に、めまいがして……」

 陽菜美は取り繕ったように慌てて立ち上がると、すぐに来客用の湯飲みを取り出してお茶の支度を始める。

 ふらつきを感じながら、高い棚に入っている茶筒を取ろうと手をのばすと、杉橋がヒョイと取り出してくれた。


「最近忙しそうだったからね。陽菜美ちゃんに無理させるなって、蒼生に注意しないとだなぁ。蒼生は外出だっけ?」

「は、はい……もうすぐ帰って来ると思います……」

 陽菜美はそう答えながら、はっと顔を上げる。

 自分がここにいる間に、蒼生が外出から帰ってきてしまうかも知れない。

 途端に、蒼生と純玲を会わせてはいけないという直感が陽菜美を襲った。


 ――すぐに支度して、戻らないと……。


 陽菜美が慌てて、コップにジュースを注いでいると、杉橋が陽菜美の手元を覗きこむ。
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