キスはボルドーに染めて
話し合いの行方
異様な静けさの中、OTOWAホールディングスの社長室の前に立った陽菜美は、緊張した面持ちで隣に立つ蒼生を見上げた。
コンコンと秘書が静かに扉をノックし、中から「どうぞ」という声が聞こえてくる。
蒼生は陽菜美を振り返ると、そっと手をさし出した。
二人はぎゅっと手を握ったまま、ゆっくりと部屋の中へと入る。
その瞬間、いち早く陽菜美の姿を見つけた純玲が、息を飲む姿が目に映った。
「どうして……!?」
感情を押し殺したような小さな声が聞こえ、陽菜美は蒼生の手を強く握りしめる。
蒼生が手をぐっと握り返すのを感じながら顔を上げた陽菜美は、サッと部屋の中を見渡した。
部屋の奥の肘掛け椅子に座っている初老の男性は蒼生の父親だろう。
その脇に立っているのは、蒼生の兄の一輝だろうか。
蒼生と同じくすらっと背が高く、精悍な顔立ちをしているが、どこか神経質そうなイラつきを見せた顔をしていた。
そしてソファから陽菜美に、睨みつけるような眼差しを向けているのは純玲だ。
今日は、結翔は誰かにあずけているのか、近くにいる様子はなかった。
コンコンと秘書が静かに扉をノックし、中から「どうぞ」という声が聞こえてくる。
蒼生は陽菜美を振り返ると、そっと手をさし出した。
二人はぎゅっと手を握ったまま、ゆっくりと部屋の中へと入る。
その瞬間、いち早く陽菜美の姿を見つけた純玲が、息を飲む姿が目に映った。
「どうして……!?」
感情を押し殺したような小さな声が聞こえ、陽菜美は蒼生の手を強く握りしめる。
蒼生が手をぐっと握り返すのを感じながら顔を上げた陽菜美は、サッと部屋の中を見渡した。
部屋の奥の肘掛け椅子に座っている初老の男性は蒼生の父親だろう。
その脇に立っているのは、蒼生の兄の一輝だろうか。
蒼生と同じくすらっと背が高く、精悍な顔立ちをしているが、どこか神経質そうなイラつきを見せた顔をしていた。
そしてソファから陽菜美に、睨みつけるような眼差しを向けているのは純玲だ。
今日は、結翔は誰かにあずけているのか、近くにいる様子はなかった。