キスはボルドーに染めて
突然の再会
あの後、フロアに戻った陽菜美は、ただただ無心で仕事をした。
幸いお客様と電話でやり取りをしてると、だんだんと気持ちは落ちついた。
人と話をする仕事がこんなにも有難いものだと思ったのは初めてのことだ。
あまりに無心で仕事をしていたせいか、定時のチャイムが鳴った時、陽菜美は今日自分が、一切休憩を取っていなかったことに気がついた。
――さすがにお腹空いたな……。
陽菜美はのそのそとヘッドセットを外し、パソコンの電源を落とそうとマウスを操作する。
「じゃあ、私はお先でーす」
早々と帰り支度を整えた沙紀は、もう席を立っていた。
フロア内がざわざわと騒々しくなり、陽菜美も引き出しから鞄を取り出そうと手を伸ばす。
すると急に背後に人影を感じて振り返った。
「結城さん、少しいいかな」
少し前かがみになりながら、なんとも言えない、気まずそうな顔を覗き込ませているのは貴志だ。
貴志は会議後にそのままフロアに来たのか、手には資料のようなものを持っている。
幸いお客様と電話でやり取りをしてると、だんだんと気持ちは落ちついた。
人と話をする仕事がこんなにも有難いものだと思ったのは初めてのことだ。
あまりに無心で仕事をしていたせいか、定時のチャイムが鳴った時、陽菜美は今日自分が、一切休憩を取っていなかったことに気がついた。
――さすがにお腹空いたな……。
陽菜美はのそのそとヘッドセットを外し、パソコンの電源を落とそうとマウスを操作する。
「じゃあ、私はお先でーす」
早々と帰り支度を整えた沙紀は、もう席を立っていた。
フロア内がざわざわと騒々しくなり、陽菜美も引き出しから鞄を取り出そうと手を伸ばす。
すると急に背後に人影を感じて振り返った。
「結城さん、少しいいかな」
少し前かがみになりながら、なんとも言えない、気まずそうな顔を覗き込ませているのは貴志だ。
貴志は会議後にそのままフロアに来たのか、手には資料のようなものを持っている。