キスはボルドーに染めて

二人の企画

「それで、陽菜美が思いついた別の案って?」

 資料の確認が終わったのか、蒼生が手に持っていたファイルを机に置くと顔を上げる。

 急に蒼生と目が合って、陽菜美はドキッと心臓を跳ねさせながら、蒼生のデスクの前にそろそろと寄った。


「実はOTOMall(オトモール)のサイトを見ていて……」

 陽菜美の声に、蒼生は「OTOMall……!?」と驚いたような声を出す。

 陽菜美はこくりとうなずくと、他部署から借りてきたOTOMallのカタログを広げながら、ワインの生産年度をアピールした企画ができないかと説明する。

 蒼生は終始うんうんとうなずきながら、陽菜美の話を聞いていた。


「皆さんに伺うと、その年ごとに売り出される、ボジョレーヌーボーのような商品が、最適なんじゃないかって意見が多かったんです」

「まぁ確かに、ボジョレーヌーボーであれば、その年の年度が確実に書かれるからな」

「そうですよね……でもそれだと、新規企画にはなりませんよね……」

 陽菜美は小さく息をつくと、考え込むように下を向く。
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