私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
March 第2話 落とし物
私が店内のフロアに戻ると梶井さんはいなかった。
穂風さんがレジをしてくれたらしい。
私を見て穂風さんが爽やかに微笑んだ。
「望未ちゃん。大丈夫だよ。私からも謝っておいたからね。ぜんぜん怒っていなかったから、そんなに落ち込まないで」
「すみません……」
ランチタイムが終わり、モップと雑巾を手にした。
オレンジジュースがとびちったテーブルや床、その周辺を掃除する。
空気を入れ換えるため、窓を開けると、ピンクや黄色のチューリップが春風に揺れていた。
この三月に私は菱水音大のピアノ科を卒業した。
今はバイトだけど、四月からはこのカフェ『音の葉』で本格的に働かせてもらえる。
音大を卒業したけど、ピアニストにはなれなかった私。
出場したコンクールは予選でことごとく敗退。
感情に振り回される正確性のないピアノだって先生に注意され続けてきた。
先生に言われたとおり、コンクールでもその悪い癖はでてしまった。
成績を残せなかったけど、それでもピアノを続けたくて、自分に合った就職先を探した。
ピアノが弾ける場所ならどこでもいい。
穂風さんがレジをしてくれたらしい。
私を見て穂風さんが爽やかに微笑んだ。
「望未ちゃん。大丈夫だよ。私からも謝っておいたからね。ぜんぜん怒っていなかったから、そんなに落ち込まないで」
「すみません……」
ランチタイムが終わり、モップと雑巾を手にした。
オレンジジュースがとびちったテーブルや床、その周辺を掃除する。
空気を入れ換えるため、窓を開けると、ピンクや黄色のチューリップが春風に揺れていた。
この三月に私は菱水音大のピアノ科を卒業した。
今はバイトだけど、四月からはこのカフェ『音の葉』で本格的に働かせてもらえる。
音大を卒業したけど、ピアニストにはなれなかった私。
出場したコンクールは予選でことごとく敗退。
感情に振り回される正確性のないピアノだって先生に注意され続けてきた。
先生に言われたとおり、コンクールでもその悪い癖はでてしまった。
成績を残せなかったけど、それでもピアノを続けたくて、自分に合った就職先を探した。
ピアノが弾ける場所ならどこでもいい。