私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
June 第21話 雨の日
朝からずっと雨が降っていた。
私が弾くのはショパンの雨だれ。
雨が降っているからって、そんな曲弾かなくてもという空気があったけど、今の私の気分でトルコ行進曲や英雄なんて、弾きたくない。
低い音を響かせた。
それもしつこく、強く。
雨の中、足取りは重く、大きな雨粒が空から落ちてくる。
雨水が跳ね、傘を忘れて、ずぶ濡れに―――
キッチンから穂風さんが顔をだして苦笑した。
「なんだかカビが生えそうだ」
「心情は表現できていると思うわよ」
小百里さんは微笑んでいたけど、きっと
心のなかではジメジメしてると思っていたに違いない。
常連のお客さん達もチラチラと私をみている。
「望未ちゃん。どうしたの?」
「男にフラれたらしい」
「ああ、それであんな鬱々とした演奏なのか」
「すぐに立ち直るだろう」
「そうねぇ。根がのんきだから」
誰がのんきだよっ!
思わず、雨だれなのに途中でスピードがあがり、豪雨になってしまった。
ひそひそ話していたお客さん達は口をつぐむ。
だいたいフラれたわけじゃない。
『もう会わずにいよう』って言われたわけじゃないし。
私が弾くのはショパンの雨だれ。
雨が降っているからって、そんな曲弾かなくてもという空気があったけど、今の私の気分でトルコ行進曲や英雄なんて、弾きたくない。
低い音を響かせた。
それもしつこく、強く。
雨の中、足取りは重く、大きな雨粒が空から落ちてくる。
雨水が跳ね、傘を忘れて、ずぶ濡れに―――
キッチンから穂風さんが顔をだして苦笑した。
「なんだかカビが生えそうだ」
「心情は表現できていると思うわよ」
小百里さんは微笑んでいたけど、きっと
心のなかではジメジメしてると思っていたに違いない。
常連のお客さん達もチラチラと私をみている。
「望未ちゃん。どうしたの?」
「男にフラれたらしい」
「ああ、それであんな鬱々とした演奏なのか」
「すぐに立ち直るだろう」
「そうねぇ。根がのんきだから」
誰がのんきだよっ!
思わず、雨だれなのに途中でスピードがあがり、豪雨になってしまった。
ひそひそ話していたお客さん達は口をつぐむ。
だいたいフラれたわけじゃない。
『もう会わずにいよう』って言われたわけじゃないし。