私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
May 第11話 ウサギはウサギのままで【理滉】
五月―――葉桜になった桜の木が青々と葉を生い茂らせていた。
「桜の花、今年は見れなかったな」
俺は遊んでいるように思われているが、本当に忙しかった。
向こうでは練習やコンサートがあり、一か所にいることは稀だ。
たいてい転々としている。
渡瀬も事務所社長も俺が暇さえあれば遊んでいると思っているところがあるからな。
ここで休みの要求をきっちりさせてもらう。
俺の休みを減らすなんてとんでもない奴らだ。
だいたい日本に帰ってきたなり、雑誌の取材とコンサートをいれるあたりが、もう休ませる気がないとしか思えない。
待ち合わせ場所のカフェ『音の葉』のドアを開けた。
渡瀬との待ち合わせ時間より早かったが―――中に入ろうとして足を止めた。
ピアノの音が聴こえる。
「トロイメライ……」
ピアノの音はたくさん聴いてきた。
けれど、俺にはそのピアノの音が特別に感じた。
誰もいないフロアに一人で弾くのはウサギ―――笠内望未だった。
上手いが弾くのは自分のペース。
ウサギが弾くトロイメライは穏やかな海の波を思い出させた。
「桜の花、今年は見れなかったな」
俺は遊んでいるように思われているが、本当に忙しかった。
向こうでは練習やコンサートがあり、一か所にいることは稀だ。
たいてい転々としている。
渡瀬も事務所社長も俺が暇さえあれば遊んでいると思っているところがあるからな。
ここで休みの要求をきっちりさせてもらう。
俺の休みを減らすなんてとんでもない奴らだ。
だいたい日本に帰ってきたなり、雑誌の取材とコンサートをいれるあたりが、もう休ませる気がないとしか思えない。
待ち合わせ場所のカフェ『音の葉』のドアを開けた。
渡瀬との待ち合わせ時間より早かったが―――中に入ろうとして足を止めた。
ピアノの音が聴こえる。
「トロイメライ……」
ピアノの音はたくさん聴いてきた。
けれど、俺にはそのピアノの音が特別に感じた。
誰もいないフロアに一人で弾くのはウサギ―――笠内望未だった。
上手いが弾くのは自分のペース。
ウサギが弾くトロイメライは穏やかな海の波を思い出させた。