私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】

May 第15話 魔術のように

降りだした雨は止まなかった。
傘を持たずに家から出てきた私は東屋から出れずにいた。
それは梶井さんも同じだった。

「止まないな」

激しい雨に梶井さんはため息をついた。

「このままここにずっといるわけにはいかないな」

「梶井さんとならずっといてもいいよ」

そう言った私をじろりと梶井さんはにらんだ。

「そういうセリフは十年早い」

「十年も!?」

はぁっと梶井さんはため息をついた。

「仕方ない。来いよ」

そう言って、梶井さんは少しだけ小降りになった雨の中に立った。
二人で濡れながら、近くのマンションまで走った。
公園の近くでセキュリティが厳しそうな高級マンション。

「ここは?」

「俺が日本で使っている部屋があるマンションだ。部屋に入るなよ。お前はなにをするかわからないからな」

まるで私が梶井さんを襲うみたいな言い方をされてしまった。
大理石のエントランスを抜け、奥のエレベーターにカードキーを差し込んだ。

「すごいセキュリティですね」

「お前みたいなやつが入らないようになっているんだよ」

「えっ!?私?」

「そうだ」
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