私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
May 第17話 閉じられたドア
春の細かい雨が降る中、大通りから離れた道を一人歩いた。
誰にも泣いた顔を見られたくなくて、裏道を選んだ。
梶井さんは私に対して怒らなかった。
怒らずに『じゃあな』と普通に言って、玄関まで私を見送ってくれた。
けれど、振り返った私を引き留めることなく、部屋のドアを目の前で閉め、そのドアが再び開くことはなかった。
きっと私がそのドアの向こうに行くことは二度とない。
あのまま、抱かれてしまえばよかったのかな。
でも、抱かれていたら、きっと私は他の女の人と同じ扱いをされて終わっていた。
どれを選んでも終わりしかない選択肢。
「難しいよ……梶井さん……」
関係を続けるための道がない。
わざと梶井さんはそうしているのかと思うくらい最後には終わりを選ばせる。
また涙がこぼれそうになって、手の甲でぬぐった。
うつむいた視線の先に泥で汚れたスニーカーが目に入った。
公園でついた泥。
梶井さんを追いかけるんじゃなかった。
あの場所はきっと梶井さんにとって特別な場所だったのに私が踏み込んだせい―――でも、特別な場所だとわかったからこそ、行かなきゃいけないって思った。
誰にも泣いた顔を見られたくなくて、裏道を選んだ。
梶井さんは私に対して怒らなかった。
怒らずに『じゃあな』と普通に言って、玄関まで私を見送ってくれた。
けれど、振り返った私を引き留めることなく、部屋のドアを目の前で閉め、そのドアが再び開くことはなかった。
きっと私がそのドアの向こうに行くことは二度とない。
あのまま、抱かれてしまえばよかったのかな。
でも、抱かれていたら、きっと私は他の女の人と同じ扱いをされて終わっていた。
どれを選んでも終わりしかない選択肢。
「難しいよ……梶井さん……」
関係を続けるための道がない。
わざと梶井さんはそうしているのかと思うくらい最後には終わりを選ばせる。
また涙がこぼれそうになって、手の甲でぬぐった。
うつむいた視線の先に泥で汚れたスニーカーが目に入った。
公園でついた泥。
梶井さんを追いかけるんじゃなかった。
あの場所はきっと梶井さんにとって特別な場所だったのに私が踏み込んだせい―――でも、特別な場所だとわかったからこそ、行かなきゃいけないって思った。