25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました

プロローグ

ホテルのレストラン、奥の個室。
「お連れ様がお待ちです」と案内された私は、
静かに扉を開けた。

「お久しぶりです、美和子さん」

低く、落ち着いた声。
立ち上がって私を見つめる男——

25年前、お見合いの席で会った、滝沢真樹。
大企業の跡取りらしく、自信たっぷりで、話す内容はまるで仕事の契約のよう。
「結婚は来月でもいい」「新居はもう手配してある」……
私の気持ちなどお構いなしの暴走に、私は心底うんざりした。

私は、彼のことを——
あの時、嫌いになった。

けれど今。
目の前の彼は、静かに、穏やかに微笑んでいる。



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