25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
物件探し
駅の雰囲気や、複数路線が乗り入れる便利なアクセスの良さに、
「この街、いいかも」と美和子は思いながらカフェを出た。
目の前には大手不動産の店舗。
窓にずらりと貼られた物件情報を、ひとつひとつ丁寧に見ていく。
高層マンションも多く、街並みは整っていて、治安も良さそう。
ここなら…暮らしやすいかもしれない。
「この物件、内見できるかしら」——そう思ったそのとき。
「引っ越しを考えているのか?」
聞き慣れた低音の声に、背筋がぞくりとする。
振り向けば、スーツ姿の真樹が、部下らしき男性と並んで立っていた。
「社長、車をまわしてきます」
部下はそう言って立ち去る。
「美和子さん、久しぶりだね。元気だった?」
真樹はやわらかく微笑んだ。
「真樹さん……こんにちは。今日もお仕事なんですね。お疲れさまです」
「で、引っ越しを考えてる? その物件なら、今からでも見に行けるよ。一緒に行こうか?」
「え? いえ、まだ本気で決めているわけじゃ……。お仕事中ですよね、失礼します」
慌てて距離をとろうとする美和子の手を、真樹がすっと軽く取った。
「いや、今ちょうど終わったところだ。今日は土曜日だし、帰るだけだったんだ」
その瞬間、黒塗りの車が横づけされる。
「さあ、行こう。あの物件、かなりいいところだよ」
「ちょ、ちょっと待ってください、見に行くなんて言ってないんですけど——」
抗議の声もむなしく、真樹は当然のようにドアを開け、美和子をエスコートする形で“乗せる”。
「この件、あとで頼む」
そう部下にひと言だけ言い残し、真樹は運転席の後ろに座った。
車は静かに発進し、目指すマンションへと向かっていく。
助手席で、成り行きに戸惑う美和子。
けれどその横顔を見つめる真樹のまなざしは、どこか確信に満ちていた——。
「この街、いいかも」と美和子は思いながらカフェを出た。
目の前には大手不動産の店舗。
窓にずらりと貼られた物件情報を、ひとつひとつ丁寧に見ていく。
高層マンションも多く、街並みは整っていて、治安も良さそう。
ここなら…暮らしやすいかもしれない。
「この物件、内見できるかしら」——そう思ったそのとき。
「引っ越しを考えているのか?」
聞き慣れた低音の声に、背筋がぞくりとする。
振り向けば、スーツ姿の真樹が、部下らしき男性と並んで立っていた。
「社長、車をまわしてきます」
部下はそう言って立ち去る。
「美和子さん、久しぶりだね。元気だった?」
真樹はやわらかく微笑んだ。
「真樹さん……こんにちは。今日もお仕事なんですね。お疲れさまです」
「で、引っ越しを考えてる? その物件なら、今からでも見に行けるよ。一緒に行こうか?」
「え? いえ、まだ本気で決めているわけじゃ……。お仕事中ですよね、失礼します」
慌てて距離をとろうとする美和子の手を、真樹がすっと軽く取った。
「いや、今ちょうど終わったところだ。今日は土曜日だし、帰るだけだったんだ」
その瞬間、黒塗りの車が横づけされる。
「さあ、行こう。あの物件、かなりいいところだよ」
「ちょ、ちょっと待ってください、見に行くなんて言ってないんですけど——」
抗議の声もむなしく、真樹は当然のようにドアを開け、美和子をエスコートする形で“乗せる”。
「この件、あとで頼む」
そう部下にひと言だけ言い残し、真樹は運転席の後ろに座った。
車は静かに発進し、目指すマンションへと向かっていく。
助手席で、成り行きに戸惑う美和子。
けれどその横顔を見つめる真樹のまなざしは、どこか確信に満ちていた——。