25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
お気遣いなく
「どこのデパート?ここからだと、どこも近いぞ。送っていく」
そう言って、真樹は何のためらいもなく車を走らせた。
口を挟む隙もなくて、私も「じゃあ少しだけ」と曖昧に応じてしまった。
赤信号で車が止まる。
静かな車内に、低く真樹の声が響いた。
「……あの時は、悪かった」
私は、ハンドバッグを握る手をほんの少しだけ強くした。
「ずっと謝りたいと思ってた。今さらだし、俺がすっきりしたいだけって思われても仕方ないけど、……ずっと君に謝りたいと思ってきたんだ」
信号が青に変わり、車は静かにまた走り出す。
窓の外の街が流れていく。
やがて、目的のデパートの看板が見えてきた。
「ありがとうございました。ここで……」
そう言いかけた瞬間、車は入り口を通り過ぎて、そのまま地下駐車場へと滑り込んでいった。
「え? ちょっと……!」
驚いて振り向く私に、真樹は涼しい顔で言う。
「このデパート、うちと取引があるんだ。だから俺もよく来る」
車が駐車スペースに止まり、エンジンが静かに切られる。
「昔の非礼のお詫びに、君が欲しいものを贈りたい」
まっすぐな視線が突き刺さる。
「……謝罪は、受け取りました。だからもういいです。あなたからの贈り物はいりません。お気遣いなく」
そう言って、軽く笑ってドアに手をかけた瞬間——
「“お気遣いなく”、か」
その言葉に、動きが止まる。
「……あの時も君は、同じことを言った。“お気遣いなく”って。まるで、俺がどう思っていようと関係ないって顔で、さ」
静かに、けれど確かな熱をもって彼は続けた。
「今度は俺の番だ。……“お気遣いなく”——俺の謝罪を、受け取ってほしい」
胸の奥が、きゅっと音を立てた気がした。
なんてずるい。
あの頃の強引さをまといながら、それを言葉で覆い隠すような、しなやかな攻め方。
これはただの“お詫び”なんかじゃない。
これは、始まりだ。
そう言って、真樹は何のためらいもなく車を走らせた。
口を挟む隙もなくて、私も「じゃあ少しだけ」と曖昧に応じてしまった。
赤信号で車が止まる。
静かな車内に、低く真樹の声が響いた。
「……あの時は、悪かった」
私は、ハンドバッグを握る手をほんの少しだけ強くした。
「ずっと謝りたいと思ってた。今さらだし、俺がすっきりしたいだけって思われても仕方ないけど、……ずっと君に謝りたいと思ってきたんだ」
信号が青に変わり、車は静かにまた走り出す。
窓の外の街が流れていく。
やがて、目的のデパートの看板が見えてきた。
「ありがとうございました。ここで……」
そう言いかけた瞬間、車は入り口を通り過ぎて、そのまま地下駐車場へと滑り込んでいった。
「え? ちょっと……!」
驚いて振り向く私に、真樹は涼しい顔で言う。
「このデパート、うちと取引があるんだ。だから俺もよく来る」
車が駐車スペースに止まり、エンジンが静かに切られる。
「昔の非礼のお詫びに、君が欲しいものを贈りたい」
まっすぐな視線が突き刺さる。
「……謝罪は、受け取りました。だからもういいです。あなたからの贈り物はいりません。お気遣いなく」
そう言って、軽く笑ってドアに手をかけた瞬間——
「“お気遣いなく”、か」
その言葉に、動きが止まる。
「……あの時も君は、同じことを言った。“お気遣いなく”って。まるで、俺がどう思っていようと関係ないって顔で、さ」
静かに、けれど確かな熱をもって彼は続けた。
「今度は俺の番だ。……“お気遣いなく”——俺の謝罪を、受け取ってほしい」
胸の奥が、きゅっと音を立てた気がした。
なんてずるい。
あの頃の強引さをまといながら、それを言葉で覆い隠すような、しなやかな攻め方。
これはただの“お詫び”なんかじゃない。
これは、始まりだ。