Love Potion

それぞれの行方

 二人が出て行くのをしばらく見送った後、迅くんが
「終わったな」
 そう言ってメガネを外し、ネクタイを緩めた。

 本当に終わったんだ。

「美月、大丈夫か?」
 ポンポンと肩を叩かれる。

「うん」

 どうしよう。
 緊張が解けたら、一気に全身の力まで入らなくなっちゃった。

 フラフラする、意識が飛びそう――。
「おいっ!美月?美月――!?」
 遠くで迅くんに呼ばれる声が聞こえた。



 目を開ける。ここは……?
 起き上がって周囲を見渡す。

「ここ、病院?」

 ベッドに寝かされていた。
 誰も居ない。どうしよう。とりあえず、誰か呼びに行こう。
 
 そう思ってベッドから下りようとした時――。
 部屋のドアが開いた。

「あっ、美月さん。起きたんですね?」

 亜蘭さんの姿が見えた。

「亜蘭さん!」

 知っている顔を見ることができ、安心した。

「極度の緊張から解かれたせいか、美月さん、気を失っちゃったんですよ。念のため病院に運んで診てもらったんですが、特に異常はないそうです。良かった、目を覚まして」

 また迷惑をかけちゃった。

「すみませんでした。あの、迅くんは?」

「社長は美月さんに異常がないことがわかると、先に本社に帰ってます。九条グループと契約を破棄した後始末とかもろもろ仕事が残ってまして。ま、事前にいろいろ準備してましたし、想定内なので大丈夫です」

 お礼とお詫びを言いたい。それに迅くんの顔が見たい。

「意識が戻ったら帰っても良いと医者からは言われています。九条孝介が帰ってくる前に、マンションに帰って、離婚届を置いておきましょうか?動けますか?」

 そうだ、私もやらなきゃいけないことがある。

「はい、大丈夫です」
 
 亜蘭さんに送ってもらい、自宅へと帰る。

 事前に書いてあった離婚届を机の上に置く。
 
 相変わらず部屋は荒んでいた。
 綺麗だった部屋も、数日でこんなに変わってしまうんだ。
 孝介が暴れたと思われる新しい傷も至るところにあった。
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