Love Potion

決意〜 加賀宮 迅side


…・――――…・―――

「もしもし。今、大丈夫か?」
 美月をマンションに送ったあと、亜蘭に電話をかけた。

<はい。大丈夫です。加賀宮さんこそ、大丈夫ですか?あんなに高熱だったのに、一日で回復するなんて。どんな体力してるんですか。さすがに今日くらいは休んでくださいよ>
 
 今日の朝、大丈夫そうだったから出勤したけど、亜蘭に強引に止められたからな。そのおかげで今日、いろんなことが進展した。

「悪かったな。それで、相談したいことがあるんだけど」

<加賀宮さんが自分から相談したいって、珍しいですね。やっぱりどこか具合が悪いんですか?>

「むしろ調子が良い。実は今日……」
 
 美月の記憶が戻ったことを伝えた。そして――。

<本当ですか?良かったですね!記憶、戻って。それでお互い両想いって、ハッピーエンドですね>

 そう、これでなんの障害もなかったら。《《普通》》のカップルであれば結ばれている。

「これで簡単に終われるはずないだろ?」

<はぁ。やっぱりそうですよね。九条孝介の調査については進んでますけど。順調に。あとはどんなことを考えてるんですか?>

「あとは……――――」

 俺が伝え終わると
<えっ、そこまで手を出すんですか?美月さんがもしそんなところを見たら、きっと悲しみますよ。せっかく信用してもらったのに>

 美月に協力をしてほしいと伝えた時
「実は私、録音したことがあって」
 そう言って彼女は自宅マンションで録音したものを聞かせてくれた。
 孝介(あいつ)に対して、そして相手(家政婦)にも怒りの感情がさらに生まれ、生易しいバッドエンドじゃ物足りなくなった。

「美月にはバレないようにやる。だから、手配を頼む」

 亜蘭がふぅと電話越しに溜め息をついた。

<わかりました。早々に準備しますけど。もちろん《《そこ》》に依頼するわけじゃないですよね?>

「あぁ。別宅に借りてるマンションでいい。ここにはお前と美月以外入れたくないから」

 金を出せば、いくらでも広い家に住める。
 客人用にマンションも別に借りている。アパート(ここ)は、誰にも知られたくない本当のプライベート。昔住んでいたアパートに似ているところをわざわざ選んだ。
 
 子どもの頃の俺を忘れないように。
 あの時の生活以上に辛いことはないと思っているから。

<了解です。ではまた……>

…・――――…・―――
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