満月に引き寄せられた恋〜雪花姫とツンデレ副社長〜

2話 芽吹く雪花

倉本さん対策を実行して数週間、ようやくフレキシブルタイム制にも慣れてきた。まあ、朝の拷問ラッシュを避けられるだけでもありがたい。



倉本さんは相変わらず、席を外していることが多い。以前のように雑用を押し付けられることはないが、最近では私の出社時間に合わせて話しかけてくることが多い。

一体、今度は何を考えているのやら。

それでも彼が周りにいる時は極秘プロジェクトファイルを出さないと決めてる。最近ではデザイン課にいるよりも会議室や副社長室に入り浸っていると言った方がいい。



あれから社長に相談した副社長。私の極秘プロジェクトファイルは副社長室に保管する事になった。

確かにここなら倉本さんも手が出せないだろう。

ただ申し訳ない気持ちでいっぱいになる。私が管理もまともにできないため、副社長の手を煩わせてしまった上、時折図々しくも副社長室で作業もさせてもらっているのだから。

……、でもそれだけではない。最近おかしいのだ。何がってーー私が。だって彼を見ると心が(うるさ)くなる。

(何をしているの、彩巴? そんなときめき、手放しなさい。だってあなたは……、幸せになる資格がないのだから)

そんな言葉が脳裏に浮かび、気を引き締めた。

大丈夫、今はこのプロジェクトを成功させなきゃ。

そうしたら、少しは認められるかもしれない。

そうしたら、やっと自分の居場所ができるかもしれない。
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